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ガザ地区における倫理観の明暗

Moral Clarity in Gaza


「先週の土曜日、何千ものガザ市民はイスラエル軍からアラビア語で書かれたメッセージを携帯で受け取った。それはイスラエル軍が、ガザの人々に、武器が隠してある家から離れるよう予告するメッセージだった。」(2008年12月27日Associated Pressからの引用)

地域と政治の絡んだ紛争は、通常、倫理的に複雑なものです。しかしイスラエル、ガザ地区における戦闘はそうではありません。倫理的にみて、これほど明らかなのは珍しいだけではなく、痛々しいものです。

イスラエルは市民生活に対して道徳的な立場をとっています。それは、イスラエル側はガザ市民や「敵」の非戦闘員(従軍医師や補給関係の人など直接の戦闘に関わらない人たち)に前もって危険が迫っていることを、自らのリスクを負ってまで警告します。ハマスは容赦のないロケット射撃や武装していないイスラエル兵への臼砲襲撃によって、この紛争を始めました。ハマスは、過去3年間でガザから6464回もの発砲をしました。またハマスは、武器をパレスチナ市民の家の中や側に置くことを故意に行っています。

これには二つの目的があります。一つ目は、イスラエルが市民のいるところを避けて攻撃するという倫理観を利用し、ハマスはパレスチナ市民をあえて武器のそばに置き、市民を危険にさらしてまで、ほんの少しでも多くの武器を守ろうとします。二つ目に、ハマスはイスラエル兵が新型の精密兵器を保持しているにもかかわらず、攻撃に伴う副次的被害があることを望んでいます。もし運がよかったら、イスラエル軍の攻撃が狙いを外し莫大の数のパレスチナ市民が死ぬことを望んでいます。そしてもちろん世界はイスラエルを非難するでしょう(訳者注:つまり、イスラエル軍の爆撃でパレスチナ市民が死ねば死ぬほど、ハマスにとっては、イスラエルが悪者であることを世界にアピールするよいチャンスになるのです)。

ハマスにとって、ユダヤ人が死ぬことよりもパレスチナ人つまり、国民が死ぬことがもっともありがたいことです。ユダヤ教徒を殺すというと宗教心と殉教心(自己の信仰する宗教のためにその身命を犠牲にすること)がいたるところにはびこっていて、それは本当に邪悪なものです。例えば、ハマスの子供向きのテレビ番組で、無邪気で皆が大好きなミッキーマウスのようなキャラクターのパレスチナ人が、イスラエル人を棒で死ぬまで打ちのめすというものがあります。

今日のガザ地区での戦闘において、片方はできるだけ多くの市民が悲しみ、敵と味方両方が苦しむことを追求しています。そしてもう片方は、敵と味方の両方をできる限り救うことを目指しています。これは何度も繰り返されているテーマです。イスラエルは2006年のレバノンのヒズボラ襲撃前にも南レバノンの村人に同様の警告をしました。相手に事前に攻撃の予告をする敵がいるのでしょうか。イスラエルは自国の軍人の命の犠牲を払うリスクを負うことを知りながら、彼らに警告をしました。

ハマスとイスラエルの間にはこんなにもやり方に違いがあります。やり方だけでなく目的にも同じくらい明快な違いがあります。イスラエルはガザに一つの目的を持っています。それは、2005年にガザを引き渡したときに望んだような、平和な状態、つまり争いのない制限制約のない正常な関係をガザに持つというものです。パレスチナを支配していたトルコやイギリス、エジプト、ヨルダン、パレスチナのどこの国もパレスチナに国を与えたことがなく、イスラエルがパレスチナにガザを初めて国として与えたのです。

結果として何が起こったでしょうか。これは遠い昔の古代史ではありません。パレスチナ人が自分の国を手に入れたいという理由で建国を始めたのでしょうか?違います。そこには道もないし、裁判所もないし、工業もないし、議会もないし、市民社会も全くないのです。またイスラエル人がパレスチナ人に残した温室ハウスなどの繁栄したインフラは破壊され、放棄されました。その代わりに、イラン人の支援を受けているガザのリーダー達は、彼らのすべての資源を、武器の輸入やテロリストの訓練、イスラエル人をガザとの国境をこえて誘拐するためのトンネル建設など、テロ資本につぎ込みました。そして、もちろんミサイルを飛ばし続けることにも資本を費やしています。

パレスチナ人の不満は何でしょうか?占領や軍による統治、植民化が不満なはずはありません。2005年の9月、イスラエルがガザの入植地から撤退したとき、それらすべては排除されたからです。彼らの不満はたった一つ。ハマスはそれについて隠したりしていません。それは、・・・イスラエルの存在自体です。

ハマスはその戦略も隠していません。対立を挑発しているのです。市民が殺される、避けられない事態を待っているのです。そして世界へイスラエルに汚名をきせようとしているのです。そして、レバノンで起きたことと全く同じように、約束の守れない休戦状態を強制します。そしてレバノンでのように、休戦期間は次の戦争へ向けての再武装、戦争体制再建への時間かせぎです。永久に続く戦争です。パレスチナの存在する理由がイスラエルの根絶であるならば、起こりうる2つの結果は、ハマスの崩壊か、イスラエルの消滅しかありません。

イスラエルが今できる唯一のことは、前回ガザ地区を引き上げたときにしなかったことをすることです。それは引き上げの際、イスラエル軍がもう占領をしない代わりに、イスラエルに対しての攻撃や暴力を一切許さないという条件をつけなかったことです。その条件をつけなかったがために、イスラエルは攻撃を受け続けることになったのです。その攻撃から自国を守るためにイスラエルは軍を出さなければならない結果となりました。このことをパレスチナ側はイスラエル軍が自分達を攻撃しているという言い訳にしました。結果的にイスラエルは、絶え間ないミサイル攻撃やテロ、暴力と攻撃を黙認したことになってしまいました。 

ハマスが6ヶ月間の停戦の延長を否認したこと(ただしこの期間、ロケット射撃は止むことはなく、頻度が減っただけであった)はイスラエルにとって3年前に取り付けるべきであった条件を再び取り付けられる機会となりました。それはロケット射撃のない、追撃砲のない、誘拐のない、戦争のない、という絶対条件です。アメリカ政府が正式に述べたような、持続的で永続的な休戦。もし今回の戦いがこの条件が満たされない状況に終われば、イスラエルがまたもうひとつの戦争に負けるということです。今後の行方は、イスラエルが勝つために必要な勇気と自分達がしていることが倫理的に正しいという確信を持ち続けられるかにかかっています。

チャールズ・クラウトハマー Charles Krauthammer

 

翻訳 中岡 舞、ベンソン マーク&万里子

原文は、ワシントンポスト紙。再出版先(Aish.com)へのリンクはここをクリック


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